現実世界のアバターとしての"肉体"の話
今日は"化粧をしなくちゃいけないんだ"と初めて思ったときの話。
私は自分の見た目にそれほど頓着したことがないまま中学生くらいまでの幼い頃を過ごしていました。
本の虫だったしオタク的な人生を送っていたし、芸能界とか"見た目も重要"な世界にほとんど興味がなかったからというのも要因かもしれない。
もちろんテレビにうつる綺麗な人を見れば"綺麗だな"とは思うんだけど、そういう見た目に対する評価って自分にとってあまり現実味を持っていなくて、友人とかの造作に対して"美醜"を真面目に考えたことがなかったし、自分も"美醜"という価値観で測られることがあると身に迫って思っていなかったんだよね。
それこそフィクションやらなんやらで"恋愛には美醜の要素も関わってくる"というイメージはなんとなくあったけど、恋愛というもの自体にも自分とは縁遠いものだという意識があったし。
服はどう足掻いても着なくちゃいけないから色とかデザインの好みで一応選んではいた(と思う)けど、化粧って別にしないと捕まるわけでもないし学校に行けば校則違反だし、"わざわざ化粧をして自分を飾り立てたほうがいい"みたいに思ったことって全然なかった。
そんな私が"化粧をしなくちゃいけないんだ"って思ったのには明確なきっかけがあって、細かい文言までは自信がないけれどエピソード自体は今でも覚えている。
私には顔面の造作が整った友人がいます。いろんな人が彼女を可愛いと言うから友人の欲目という訳ではないと思う。(しかし彼女の親しい友人に対する態度も滅茶苦茶可愛い。友人の欲目が出ちゃいそうなくらい可愛い。可愛い女の可愛い姿を見ているとそれだけで好きの気持ちが膨らんじゃうところはあるよね……)
その友人と中学時代にちょっと遠方まで歩いて出かけよう、みたいな話になったんですよ。それで待ち合わせて出かけたんですけど、歩いている最中に彼女に
「今日化粧してなくて(だかちゃんと化粧してなくてだか)ごめん」
って言われて、私はそのときごめんとも思わずにノーメイクだったから
「何がごめんなの!?化粧についてなんて全然気にしたことなかった」
的なことを返したんだよね。そうしたら
「化粧してない綺麗じゃない顔で隣を歩くのが申し訳ない」「(綺麗じゃない人間を連れて歩くのは)恥ずかしくない?」
みたいなことを言われて、私はもう滅茶苦茶びっくりしちゃったんですよ。"化粧をしていない"という選択が他人に対して"申し訳ない"ことある!?と思って。流石に今は(良いことか悪いことかは別として)"化粧せずに隣を歩くのが申し訳ない"という言葉が出てくるのはちょっとは理解できる。
自分の中のルーティンの身嗜みに"化粧"も入っていて、それも済ませずに来ていてごめんね、でもやる気がなかった訳じゃないんだよ
みたいな感じでしょ、多分?
いや、でもとにかくそう言われたときの私は、自分より圧倒的に整った顔をしている友人が
「化粧もしていない自分を隣に連れて歩かせるのは申し訳ない、恥ずかしいでしょ」
みたいなことを言ったことに本当に衝撃を受けました。
中学生といえど後先考えずにものを言うような年齢でもなかったから
「それはつまり、あなたは今私の隣を歩いていて恥ずかしいってこと?」
とか言ったりはしなかった(と思う)けど、そのときが"自分の外面を整えておかないと友人すら失うことがあるんだな"と思った最初のタイミングだったと思う。
だからと言って私は前述のように"美醜"に興味がなかったから自分の顔を客観的にジャッジすることもできなかったしオタクテンプレみたいなセンスをしているし現在進行形で太っているからその後も長い間見られたもんじゃないような姿をしていた(というか今でも間々している)んですけど……
でもとにかく私は彼女にそう言われなかったら大学生とか社会人になって周りが当たり前に化粧をするようになるか、このエピソードに類するような経験をするまで化粧なんて全然しなかったと思う。
ちょっと話が飛ぶけど、モンスターハンターとかのゲームって、主人公のキャラクターの造作とか体型を自分で選べるじゃん?
自分が操作するキャラクターを作るときに自分が嫌いな見た目にセッティングすることって殆ど無いと思うんですよね。いつでも自分の視界に入ってくるキャラクターが嫌な見た目だったら多分それって結構ストレスだと思うから。
だから、それと同じ感じで自分の操作する現実世界のアバターとして自分の肉体を好みに近づけたいというのは理解できる。
ただ、現実世界ってFPSじゃん。FPSって言って伝わりますかね?ゲーム中の視点の話なんですけど。
当たり前だけど、私達は基本的に一人称視点で世界を見ている(ゲーム上であれば自分の目で見た世界が画面に映し出されるような感じ)。
例えばどうぶつの森とかみたいに自分の操作するキャラクターの視点ではない場所にカメラがあって、自分の全身がいつでも視界に映り込んでいるわけじゃないじゃん。(どうぶつの森みたいな視点のあり方をFPSに対してTPSという。)
そうなるとなかなか自発的にアバターを整えようという気になれないんだよね……
"ある程度見た目を整えないといけない"と最初に思ったのもそうしないと交友関係に支障が出るかもしれないと思ったからだし、"自分の見た目が生み出す効果"には多少興味があるけど相変わらず自分の見た目そのものには結局あまり興味がないんだと思う。他人の見た目にもあんまり……
ただ、趣味が合うとか面白いとかそういう理由で好きな人の見目が素敵だったらより好きになってしまうみたいなことはあるな。見目が悪いことで評価が下がることはないけど、面白い上見た目も素敵だと2倍素敵!みたいな感じで。
そしてそれを考慮したら絶対自分も己の見た目を気にしていた方がいいと思うんですけれども……
後なんかオタクって"オタクの制服"みたいなもんを着がちじゃない?オタクの人には分かってもらえる感覚だと思うんだけど。
オタクの制服を着ているオタクに会うと同病相憐的な感じで恥ずかしくなっちゃうことはありますね……
別に好きで着ているならそれでいいんだけど、なまじ同じ穴の狢だからオタクの制服を着ていたことをいつかその人が恥ずかしく思うんじゃないか、みたいな気持ちになってしまうんだろうか…… ああいうタイプの人も多分昔の私と同じように己の肉体が現実世界の己のアバターだってことをあまり理解していないんじゃないのかな…… 何度も言うけど本人がいいならいいしそんなこと私が思うのはお門違いも甚だしいんですけどね。
ちょっともう着地点を見失ったので締めますが、最終的に言いたいことは
"最近好きな人間の誰にも会わないから見た目に気ぃつかってなすぎてヤバいです"
です!お終い!